神道を信仰している場合、お墓はどうあるべきか考えたことはありますか。また、すでにお墓はあるけれど、お墓を守る人がいなかったり、お墓のある場所が遠く、お墓参りが途絶えてしまいそうだったりと、お墓の維持に悩んでいる人もいるでしょう。
経済的にお墓を管理するのが大変だと感じている人もいるかもしれません。
ここでは、神道のお墓の特徴やしきたりなどについて解説します。
墓じまいに関して視野に入れた方が良いことも説明していきますので、神道のお墓や墓じまいについて悩んでいる人は、ぜひ参考にしてみてください。
神道ってそもそもどんな宗教?
神道とは、日本の土着の宗教を指します。
古来の民間信仰と儀礼の複合体を原点に持ち、動植物や岩などにも神や神聖なものの存在を認める、アニミズム的な特徴を持った宗教です。
その起源は大変古く、紀元前200年頃まで遡るといわれています。
縄文時代の遺跡からは、何らかの呪術的な意味を持つであろう遺物も見つかっています。神道という言葉が始めて文献に登場したのは、西暦720年に編さんされた、日本書記という歴史書です。
ただし、このときには神道というのは、宗教的儀式や神々、社(やしろ)を指したものでした。
宗教という概念を含んだ意味で使われるようになったのは、12世紀に入ってからのことです。神道は日本の人々の日常生活に密接な関係を持っていますが、特にそれを作り出した教祖はいません。
キリスト教でいうところの聖書や、イスラム教のコーランのような教典もありませんし、組織化された団体もないのです。
神という漢字が使われてはいますが、もともとは先祖の信仰や神社で祭祀を行うこと、大きな自然の力に対する畏敬などが始まりであり、そこから日本の島々の創造や神々降臨の伝説へとつながっていったようです。
近代になり神がGodと訳されたため、一神教の宗教と間違われることもあるみたいですが、それは誤解です。神道には、神学や集まった人々による礼拝というのは、あまりありません。
また、神道は仏教との関係も深く、両部神道といって神仏が合体して信仰の対象となっていたこともあります。
これにより、日本全国に神社と寺院が共存することができたのです。
このようになったのは、古代の日本は韓半島を経由して中国からたくさんの文物が入ってきていたため、そこに道教に関するものが含まれていて神道に加わっていったと考えられます。
こういった神道と仏教の交わりの末、風水や陰陽道など、日本独特の信仰体系が作られていったのでしょう。
昔はキリスト教の宣教師が、日本人がお寺にも神社にもお参りをするのを見て驚いていたようですが、今でも神道と仏教、両方を信仰している人は多くいます。
このような日本特有の宗教の共存が可能となった背景には、八百万の神々を崇拝する、神道の考え方が根底にあったからでしょう。
日本人の宗教観には、神道が大きな影響を与えているのです。
神道のお墓は四角錐が一般的
神道は、ポピュラーな仏教のお墓とほぼ形は変わりません。
これは、お墓を建てるということ自体が宗教により始まったものではなく、日本の風俗習慣である、祖先の祭りを行うという行為から生じたものだからです。
あえて特徴をあげるのであれば、墓石の頭が四角錐であることが挙げられるでしょう。
また、角兜巾と呼ばれる加工をして頭を三角形にしたものもあります。
これは、一説には熱田神宮の御神体である天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)を表しているといわれています。
他にも、神道は仏教と違って線香をあげないため、香炉がないのも特徴です。その代わりに、白木素材の8本足で作られた、お供え物を置くための八足台があります。
花代はシンプルな角型をしているものが多いでしょう。
地域によってもお墓の形は変わりますので、気になる人は神主さんに相談してみるのも良いかもしれません。
特徴的な神道の彫刻や霊名
仏教では「○○家之墓」という彫刻が一般的ですが、神道では「○○家奥都城」と刻まれるのが一般的です。「奥都城」と書いて、「おくつき」と読みます。
奥都城とは、神道式のお墓であるのを表すために使われているようです。
ちなみに、奥都城は奥津城とも書き、都が神官・氏子などを勤めた人の墓に使われる漢字であるのに対し、津は一般信徒の人の墓に使われる漢字でした。
他にも、神道式のお墓には、自然石に家名を刻んだものや、墳丘型と呼ばれる土饅頭の形をしたもの、お墓の前に鳥居が設けられたものなども挙げられます。
また、神道には仏教のように戒名もありません。ただし、戒名と同様の意味合いを持つ諡(おくりな)があります。
これは、男性の場合、稚郎子(幼児)、郎子(少年)、彦(青年)、大人(成人)、翁(老年)。
女性であれば、稚郎女(幼児)、郎女(少女)、姫(青年)、刀自(成人)、媼(老年)と、年代によって変わっていくのが特徴です。
そして、諡の後には、命(みこと)や之霊・命霊・霊位などをつけます。
時代とともに柔軟になってきている
古来、守り通されているマナーやしきたりなどはあるものの、現在ではお墓のありかたは非常に柔軟になってきているため、神道だからといって洋風の要素を取り入れてはいけないということはありません。
石材屋と相談しながら、お墓の形を考えていきましょう。
また、お墓の維持に多額の資金が必要になることから、守り通すのが難しくなってきているという現実もあります。
このため、墓じまいも視野に入れていくことがおすすめです。
墓じまいとは、現在あるお墓を撤去して、遺骨を他の墓地や永代供養墓地に移したりすることを指します。
遺骨は、無届で勝手に移動することはできません。墓地の管理者へしっかりと届出を行わなくてはなりませんし、お墓を移す場合には、新しい墓地や墓石の準備も必要です。
お墓から遺骨を取り出す際には開眼供養という儀式も行いますし、これら一連の墓じまいを行うには、離檀といってお寺にお礼を渡さなくてはなりません。
この他、お墓の解体作業や、移転後の墓地で行う納骨や法要にもお金がかかります。自分でこれらを行うのが難しい場合には代行業者もいますが、こちらにも費用がかかります。
このように、墓じまいを行う場合には、ある程度の費用がかかるということや、さまざまな手続きが必要だということも覚えておきましょう。