火葬も埋葬も許可が必要!墓地埋没法の概要
墓地埋没法とは昭和23年に制定された法律で、その名の通り墓地や埋葬の方法についての決まりごとを定めたものです。
この法律を順守してもらうことで衛生面や宗教感情の問題などをクリアし、安心して故人を弔うことができるのです。
たとえば、比較的有名なものとしては死後24時間以内の火葬および埋葬の禁止があります。
なぜそのような決まりがあるかというと、死亡と判断された直後にごくわずかな確率ではあるものの蘇生する可能性があるため、生きた状態で火葬や埋葬などをされてしまうリスクを回避するためです。24時間がすぎれば死紋と呼ばれる紫の斑点が現れ、よみがえる可能性はゼロとなります。
もっとも、医学の進歩によって24時間を待たなくても確実に生死の判別ができるようになっているのですが、法律が改正されない限りはそれを守る義務があります。ただし、妊娠7カ月に満たない胎児の死産の場合はその限りではありません。
また、埋葬や火葬などを行う区域もこの法律によって定められています。
もし新たにお墓を設ける場合は各都道県知事の許可を得る必要があります。逆に言うと、知事の許可さえ得られれば個人で墓地を所有することもできるのですが、実際に認められる可能性は極めて低いでしょう。
なぜなら、日本は交通機関が発達しており、昔のように墓地が遠くて墓参りができないといったことは物理的にはないからです。そして当然のことながら、埋葬は墓地、火葬は火葬場以外で行ってはならないとされています。
火葬や埋葬を行う際には申請書を役所に提出し、市町村の許可を得なければならないというのも墓地埋没法に定められた重要な決まりごとです。
火葬をするには火葬許可証がなくてはならず、土葬を行うには埋葬許可証が必要です。こうした許可証は5年間の保存が義務付けられています。そのうえ、一度埋葬した遺体や遺骨を移動させる際には改葬証明証を発行してもらわなければなりません。
つまり、許可証が発行されるまではいかなる理由があろうとも埋葬や改葬はできないということになります。
ちなみに、万が一埋葬を行う者が誰もいない場合は、市町村がこれを代行しなければならないとしています。
墓地埋没法には埋葬する側だけでなく、墓地などの経営者側についての規定もあります。
墓地、納骨堂、火葬場を新設したり、あるいは廃業したりする際は都道府県知事の許可を得ることが必要です。もし無許可でそれらを行えば、懲役6カ月以下もしくは罰金5000円以下の刑罰に処せられることになります。
また、忘れてはならないのが墓地管理者の義務です。
墓地管理者は正当な理由がなければ火葬や埋葬の要請は断ってはならず、それらの実施状況は毎月定められた日に報告しなければならないとされています。
いずれにせよ、それぞれの立場の人は定められた法律の意味を理解し、それをしっかり順守することが大切です。
意外と多い!墓地埋没法に関する誤った理解
葬式は私たちにとって大切な儀式であるにも関わらず、そのルールとなる墓地埋没法を理解している人は必ずしも多くはありません。
その象徴ともいえるのが散骨に対する認識です。
墓地埋没法によれば埋葬が行えるのは許可を得て建てられた墓地だけなので、遺骨を海や山に散布するのは当然違法になるはずです。しかし世間では、散骨は合法だと思っている人が数多くいます。
これは1991年に散骨が違法か合法かで問題になった際に、法務省刑事局が「葬送を目的として節度を持って行うのであれば、死体遺棄には当たらない」という意味の見解を出したことに起因しています。
なぜ『という意味の』という回りくどいいい方をするのかというと、この見解はあくまでもその場限りの発言に過ぎず、公式な文章として残されていないからです。
結局のところ、散骨に関しては今後の法整備が待たれるグレーゾーンの領域ということになっているのです。
一方、葬式の解説書の類でも誤った記述が多くみられるのが、許可証に関する解釈です。
ほとんどの解説では「火葬許可証を火葬場に提出すると拾骨の後に返却され、それが埋葬許可証になります」といった意味の記述がされています。しかし実際は、火葬許可証と埋葬許可証はまったくの別物であり、間違っても火葬許可証が埋葬許可証に早変わりするなどといったことはないのです。
埋葬許可証とは、土葬を行うために必要な書類です。
日本では土葬を行うことがほとんどないため、埋葬許可証という言葉だけが一人歩きし、火葬許可証が途中で埋葬許可証に変わるなどといった誤解が生まれたのだと考えられます。とはいえ、実際には火葬許可証があれば火葬から焼骨の埋葬までできるので、その点を誤解しないようにしましょう。
さらに、ベテランの葬儀屋でも間違う恐れがあるのが分骨に関する法的解釈です。
一般的に、勝手に遺骨を持ち出すのは違法だと思われがちですが、実は違法なのは無許可での改葬とそれに伴う分骨の収蔵のみです。その場合は改葬許可証や分骨証明書が必要となります。
一方、改葬を伴わなければ無断でこっそり分骨を行ったり、遺骨を持ち出したりしてもそれを罰する法律はないのです。
ただ、罰則規定がなければ何をしてもOKかといえば、それはまた別の問題です。
たとえば、遺骨をセラミック化して商品として売り出したとしても、墓地埋没法のなかにはそれを直接罰する規定は存在しません。
しかし、このような行為は一般的な国民感情からいえば受け入れがたいことです。
そのため、「国民の宗教的感情に適合し、且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われること」という墓地埋没法の基本理念に反することになります。
遺骨を商品にすることに対して罰則がないのは、単に法整備がなされていないだけに過ぎないのです。
このように、法律について考える際には、罰則が存在するか否かだけではなく、その基本理念に反していないかという視点を持つことも大切です。
いざという時に困らないように!墓地埋没法について学ぼう
どんな人でもいずれは寿命を迎えて弔われる対象となります。そして墓地埋没法は、疫病や社会通念から逸脱した行為による混乱を防ぐために存在しています。
私たちは日頃からその内容と意味を深く理解し、いざというときに誤った葬り方をしないよう心に留めておくべきでしょう。
特に、埋葬許可証や散骨といった誤解されがちな問題については、世間一般に流布されている情報をうのみにすることなく、正確な情報を自分で調べ、少なくとも無自覚のうちに法を犯していた、などということがないようにしておきしょう。