特定の寺院に所属する家を「檀家(だんか)」といいます。檀家の役割は寺院を支援することです。
寺院にお墓の管理をしてもらい供養を任せる代わりに、お布施をして寺院の運営に関わる経済面を支えます。(※1)
そのため、檀家はお金がかかるとよくいわれているのです。檀家になることは僧侶に手厚い供養をしてもらえるといったメリットがある一方で、家によってはこのお布施が家計の負担に感じてしまっているケースもあります。
そこで、お布施は払わなければいけないものなのか、また、どういうときに必要となるのかについて解説します。
お布施は義務ではない
お通夜や葬儀、告別式での供養の際にお経をあげてもらったときや戒名を受けたときなどに、お礼として僧侶に支払うお金が「お布施(ふせ)」です。(※2)
読経料や戒名料といった言葉が使われていないことからもわかるように、お布施に代金のような意味合いのものはなく、日ごろからの感謝の気持ちを込めて差し出すものとされています。
このため、そもそも、お布施を僧侶に渡すことは義務ではありません。檀家の方から寺院に受け取っていただくというような意味合いのものとなっているのです。
また、檀家のお布施には一般的に決められている金額があって、それ以上の金額のお布施を払わなければいけないと思っている人もいます。
しかし、本来は、お礼の気持ちで差し出せば金額は自分が払える範囲でよく、そういった意味からもお布施を渡すことは義務ではないという言い方をされているのです。(※3)
経済的負担が大きい檀家の役割
お布施は義務ではないといいながらも、実際には多くの寺院でお布施の金額に相場があり、払うことを義務化しているのが実状です。檀家という存在が、家単位で菩提寺を経済的に支える存在となっているため、一定額のお礼を渡すことが菩提寺の運営維持のためには必須とされていることがその理由のひとつとなっています。
このため、檀家同士でお布施の相場が決まり、義務化してしまっているケースが多くなっているのです。
そもそも、檀家となるためには最初に入檀料を支払わなければいけないことが一般的です。別途、位牌を安置するための位牌堂の費用が必要となることもあります。(※4)
さらに、通常時のお墓の管理や寺院運営のための檀家の費用負担として年間維持費を支払ったり、彼岸会(ひがんえ)や盂蘭盆会(うらぼんえ)といった年間を通して行われるさまざまな寺院行事の際にもお布施を用意したりもするのです。
このため、檀家はなにかと費用がかかることが多く、経済的負担が大きいといわれています。(※5)
お布施は寄付とは違う
寺院に払うお金には「お布施」のほかに「寄付」もあります。お布施はお経をあげてもらったことや、戒名を貰ったことに対するお礼として渡すものです。対して、寄付とは、お寺の修繕や改築、新築などに際して檀家が負担を求められるものをいいます。法事の際にお礼として支払うのがお布施で、お寺の維持や運営に必要な費用が寄付という違いがあるのです。
寺院ごとに異なるもののお寺の建物は何十年に一度の頻度で修繕や新築を行うことが一般的です。本堂の屋根や本堂内部となる内陣、山門のほか、住職家族が住む庫裏(くり)と呼ばれる箇所が劣化した場合にも、檀家に寄付が求められることが一般的となっています。
これらの寺院の施設は宗徒である檀家一堂の財産であるという考えが仏教にはあるからです。(※5)
寺院の造りや劣化具合によって必要とされる修繕費用は異なりますが、数万円から数百万円、なかには数千万円といった高額な寄付をする檀家もいます。檀家に階級がある寺院もあり、本家や財力のある家などで中でも階級の高い総代とされている檀家には特に大きな金銭負担が期待されることもあるのです。(※6)
また、本来、寄付とは任意の金額で払うものですが、寺院によっては多額の寄付金を檀家に割り当てて求めるところもあります。(※7)
お布施の相場は幅が広い
お布施の相場は、お寺のある地域や寺院の格式、檀家とお寺の付き合いの度合いなどによっても大きく違います。
たとえば、葬儀の際のお布施と限定しても、10万円程度で済むところもあれば、100万円以上が相場となっているところもあるのです。
このため、檀家としてお布施を払う機会ができた際に、実際にいくら包むべきなのかと迷う人は少なくありません。
そのような際には、一般的に菩提寺の住職に直接お伺いをたてることが通常です。(※8)
そして、実際にお伺いをたててみたら予想よりも高い金額だったという場合もあります。
しかし、その金額は必ずしも全国的なお布施の相場ではないということを知っておきましょう。たまたま、檀家になっているお寺の相場が全国的な相場よりも高いという可能性もあるのです。
お布施の負担が大きいと感じたら
お布施など経済的な負担が大きいと感じたときには檀家で居続けるべきかどうか検討してみるのもよいでしょう。檀家をやめるという選択肢もあります。
ただし、檀家をやめるためには、ただ寺院に申告すればよいというわけではありません。
まず、離檀料などのお金が必要となります。離檀とは、お寺にあったお墓を移転したり撤去したりして檀家を離れることです。
そして、離檀料は、今までお墓を管理し先祖の供養をしてもらった寺院へのお礼の気持ちを表すお金をいいます。本来の意味でいえば、お礼の気持ちを表すものであるため、お布施と同じく必ずしもいくら支払わなければいけないという決まりはありません。ただし、お布施同様にお寺によって相場があることが一般的です。
また、檀家から離れる際には先祖代々の墓を墓じまいして、他の形で供養をすることも必要となります。
お墓から遺骨を出すということは遺体の一部を移動させることを意味するため、遺骨の移動先を決めた上で、役所を通して改装の手続きをすることが求められているのです(※9)(※10)
お布施の金額は相談してもよい
お布施は本来、感謝の気持ちで渡すもので金額の指定はありません。自分ができる範囲内で払えばよいのです。
しかし、お寺や地域によって檀家が支払うべき相場があり、その相場とされる金額の負担が大きいと感じている場合には、菩提寺に直接お布施について相談しても構いません。事情を話して、払える範囲の金額にしてもらうことは可能となっています。
このため、生活に無理のない範囲の金額で一度相談してみるとよいでしょう。
※1.【エンパーク】用語辞典檀家
https://en-park.net/words/4473
※2.【エンパーク】お布施の目安早見表
https://en-park.net/books/8133
※3.【終活ネット】檀家のお寺にお布施はいくら払えば良いの?葬儀や法要のマナー
https://syukatsulabo.jp/article/5666
※4.【一般社団法人全優石】「檀家になる」って具体的にはどんなこと?
http://www.zenyuseki.or.jp/knowledge/manage/danka.html
※5.【一般社団法人全優石】檀家と費用
http://www.zenyuseki.or.jp/knowledge/manage/dankaHiyou.html
※6.【納骨堂辞典】檀家とは?求められることや檀家制度の歴史
http://xn--i6q32n248aispxtm.com/column/455
※7.【マイベストプロ】二上昌弘コラム檀家であるということのメリット/デメリット
http://mbp-saitama.com/futakamiya/column/6783/
※8.【タウンセレモ】お寺とお布施について
http://town-ceremo.com/k-ofuse.php
※9.【終活ネット】離檀料の相場とは?檀家をやめるのにはいくらかかるのか
https://syukatsulabo.jp/article/5972
※10.【一般社団法人全優石】離檀とは
http://www.zenyuseki.or.jp/knowledge/manage/ridan.html