「お墓」「仏壇」などは、単なる「物」であることを超えた存在です。人々は時にそこに神聖さを感じ、時にそこに故人を写し取り、時にそこに救いを見ます。
今回はこのように特異な性質を持つお墓・仏壇に関わる宗教的儀式「閉眼供養」と「開眼供養」について解説していきます。
閉眼供養と開眼供養、それぞれの意味について
お墓・仏壇を新しく作ったり、撤去したりするときには「閉眼供養・開眼供養」が行われます。
今回はこの2つの意味について解説していきます。
開眼供養とは
「開眼供養(かいがんくよう・かいげんくよう)」とは、お墓・仏壇を新しく設けたときに行われることがある儀式です。「魂入れ」「入魂式」などのような別名で呼ばれることもあります。
お墓・仏壇は、それだけではただの「物」にすぎません。ここに亡くなった方の魂を入れることで、初めて手を合わせる対象となります。開眼供養とは、この「魂を入れる行動とその儀式」を指します。
またここでは、「お墓・仏壇」としていますが、位牌などにも同じことが行われます。
開眼供養では、多くの場合、
1.開眼供養を行う場所に集合する
2.ご僧侶による読経が行われる。なお、お墓の場合は、このタイミングで納骨をすることもあります
3.場所を移動し、会食などを行う
4.解散
※新型コロナウイルス(COVID-19)の影響もあり、現在は親戚を呼ばずに開眼供養を行うケースもよくみられます。
閉眼供養とは
開眼供養に対して「閉眼供養(へいがんくよう)」は、「魂抜き」などとも呼ばれるものです。
今まで故人の魂が宿っていたお墓・仏壇から魂を抜く儀式を指すことばであり、この閉眼供養を行うことでお墓・仏壇がただの「物」に戻ります。
閉眼供養は主に、「墓石を取り壊し、ほかのところにご遺骨を移す」「引っ越しをするが大きな仏壇は持っていけないので、仏壇を引き取ってもらう」などのようなときに行われるものです。
閉眼供養を行う場合は、
1.閉眼供養を行う場所に集合する
2.ご僧侶による読経が行われる。このときに、ご遺骨をとり出すことも多い。なお、ご遺骨を納める場合でもご遺骨をとり出す場合でも、必ず墓石店に連絡をして作業をお願いする必要がある
3.場所を移動し、会食などを行う。
4.解散
※墓石は非常に重く、個人で動かそうとすると思わぬ事故につながりかねません。そのため、墓石店に依頼することをおすすめいたします。
閉眼供養・開眼供養に関するよくある疑問
ここからは、閉眼供養・開眼供養に関する「よくある質問」に答えていきましょう。
閉眼供養・開眼供養は絶対にやらなければならないもの?
A.必須ではない
しばしば「閉眼供養・開眼供養は絶対に行わなければならないもの」「必要不可欠なもの」とされますが、そのようなことはありません。閉眼供養・開眼供養はあくまで宗教的儀式のひとつであって、閉眼供養・開眼供養をしなければ墓じまいや墓の利用ができないわけではありません。
「宗教への帰属意識が極めて薄い」「故人の遺志で、宗教的儀式をしてほしくないと言われていた」などの場合は、閉眼供養・開眼供養を行う必要はありません。
※寺院墓地内にお墓があり「閉眼供養・開眼供養」行わない場合はご住職とのご相談が必要です。
神式やキリスト式の場合はどう解釈されるのか
A.基本的には不要、ただしご家族が希望するならば指導者に相談を
「供養」という言葉は仏式のものです。「閉眼供養・開眼供養」もまた仏教の儀式のうちのひとつですから、神式やキリスト教式の場合は閉眼供養・開眼供養は行わなくても構いません。
ただ、「なんとなく気持ちが落ち着かないから、閉眼供養・開眼供養というかたちでなくてもお墓から魂を抜くための儀式はしたい」「なんらかのかたちで、新しいお墓に挨拶をしたい」という場合は、信仰する宗教の指導者の意見を聞くようにするとよいでしょう。
お布施はいくらくらいかかる?
A.3万円~10万円程度
「お布施は心を表すもの」と言われているため、明確な「相場」はありません。ただ、お布施というかたちで、読経をしてくれたご僧侶様にお金を包んで渡すようにはすべきです。
このときのお布施はだいたい3万円~10万円程度ですが、お車代などをお渡しすることもあります。
なお、閉眼供養・開眼供養にかかる費用は「お布施」だけではありません。仏壇や墓石を購入するための費用は当然必要ですし、会食を行うのであればその費用も必要です。そのため、きちんと予算を確保しておかなければなりません。
まとめ
閉眼供養・開眼供養は、「絶対にやらなければならないもの」ではありません。
しかしご先祖様と向き合い、その魂を入れることで、人はより心穏やかにお墓や仏壇と向き合えるようになります。残されたご家族が大切な人のための宗教的な儀式として、閉眼供養・開眼供養を行われるとよいでしょう。
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