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遺産相続とは異なる!祭祀財産継承の仕組みとお墓承継における問題点

公開日:2016/4/1

祭祀財産継承に伴うお墓の承継者決定のプロセス

お墓は通常の財産とは異なり、相続税のかからない祭祀財産(さいしざいさん)の一部であると位置付けられています。祭祀財産には仏壇、神棚、位牌、系譜などがあり、それらを継承できるのはひとりだけだと民法で定められています。

つまり、お墓は長男が管理して、仏壇は次男が譲り受けるなどといったことはできないというわけです。これは祭祀財産を分割してしまうと、四十九日や三回忌などの法要を行う際に準備が煩雑になってしまうからです。

祭祀財産を継承した者は祭祀主催者となり、今後の祭祀を取り仕切ることになります。また、誰が祭祀財産の継承を行うかは、先代の祭祀主催者の遺言によって決定されるとされています。

その際、先代の祭祀主催者ができるのはあくまでも継承者の指名だけであり、「こういうような葬式や法要にするべし」などといった具体的な方針について強要することはできません。

一方、祭祀財産の継承者に指定された者はそれを拒否したり放棄したりはできませんが、代わりに継承してくれる人を見つけて受け渡すことは可能です。

しかし、実際には祭祀財産の承継者を遺言で指名されることはほとんどなく、親族の話し合いによって決められるケースが大半のようです。そして、その場合は半ば自動的に長男などの家の跡継ぎが祭祀財産を継承することになります。当然、その際にお墓も承継し、その後の管理も任されるというわけです。

万が一、明確な跡継ぎがいないなどで誰がお墓を管理するかでもめた場合は、家庭裁判所が祭祀財産の承継者を指定するケースもあります。

ちなみに、祭祀財産の継承と他の遺産相続は全くの別問題であり、お墓の管理や法要にお金がかかるからといって遺産相続を多めに主張できるわけではありません。

お墓を承継した人は菩提寺や墓地管理人に連絡して、お墓の名義や永代使用権者などの変更を行う必要があります。

その際には墓地使用許可書、承継使用申請書、申請者の戸籍謄本、実印、印鑑登録証明書などを用意しなければならず、多くの場合にはお墓を承継した事実を確認できる証明書を求められます。

例えば、協議で承継が決まった場合は協議者全員による記名押印済みの協議成立確認書、家庭裁判所に判断してもらった場合はそれを示す審判書などです。

その手続きを終えて、お墓は初めて承継されたことになるのです。

誰でもなり得るお墓の継承者

通常の遺産相続の場合は相続の優先順位が民法によって定められていますが、墓地の承継にはそのようなルールはありません。

家の跡継ぎがお墓も一緒に承継するという古くからの慣習はあるものの、別にそれが法律で定められているわけではないのです。次男や三男が承継しても何の問題もありませんし、故人に跡継ぎがいなければ甥や姪が承継する場合もあります。

また、同じ姓でなければならないという決まりもないので、嫁に出た娘が承継することも可能です。さらに言えば、遺産相続を放棄した人がお墓を始めとする祭祀財産を継承しても問題はありません。

先述したように、相続を放棄したのだからお墓も承継できないようにも思えますが、法律的には通常の遺産と祭祀財産は全くの別枠として考えられているのです。しかし、だからと言って嫌がる相手に無理やりお墓を承継させるのはおすすめできません。

祭祀財産をどう扱うかは継承者の自由とされているので、それらを勝手に処分されても文句が言えないからです。

誰も墓を承継したくないという場合には、血縁者以外に継いでもらうという手もあります。極めて稀なケースではありますが、お墓を承継するのが親族でなければならないという決まりもないのです。したがって、親族会議で反対する者さえいなければ、赤の他人がお墓を承継しても何の問題もないということになります。

ただし、承継する墓によってはその墓所の管理規則に抵触する可能性があるため、墓所管理者への確認は事前に行っておいた方が良いでしょう。

お墓の承継者がいない場合の選択肢

自分の跡継ぎが存在せず、墓を承継してくれる人もいない場合はいくつかの選択肢があります。

ひとつは前もってお墓の管理費用を前払いしておく方法です。

そうすれば、亡くなった後に自分もその墓に入ることができ、墓自体も一定期間そのまま存続することになります。そして、前払い分の期間がすぎれば、改めて合葬式墓地に埋葬されるというわけです。墓地を承継する者がいなくても、墓参りしてくれる人がいる場合に適した方法だと言えるでしょう。

また、似たような方法として永代供養墓の利用があります。

永久供養墓とは永代使用料を前払いする代わりに、長期間に渡って管理をしてくれるお墓のことを言います。

一般のお墓とは異なり、地下に設置された納骨堂に他の方の遺骨と共に納められ、その上に大きな石碑を建てるのが一般的な形です。その多くは合祀墓ですが、中には個別墓に納骨されているケースもあります。

宗派を問わずに申し込むことができて費用も比較的安いというメリットがありますが、注意してほしいのは永代供養墓の意味です。

永代とは長い期間という意味であり、決して永久というわけではありません。

したがって、十三回忌や三十三回忌、最大でも五十回忌を済ませた後は、共同墓地に無縁仏という形で埋葬し直されるのです。

永代供養墓の利用を検討している人は、そのことをよく理解しておいてください。

さらに、納骨堂を利用するというのも選択肢のひとつです。

納骨堂とは墓の代わりにロッカーのようなコンパクトな空間に遺骨を安置する方法であり、料金が安い、雨天でも墓参りがしやすい、無宗派でも利用が可能というメリットがあります。

代表的なのはロッカー型ですが、他にも仏壇タイプや墓石タイプ、機械式で遺骨がお参りスペースまで移動するタイプのものまで種類も豊富です。

ただ、納骨堂の場合も収蔵期限があり、一定の期間が過ぎた後は合同墓地に祀られることになります。

その他の選択肢としては、散骨や樹木葬儀があります。

散骨とは遺灰を海や山に撒くという埋葬の一形態で、その後の管理費が不要なので最も安上がりな方法です。ただし、他人の私有地や漁業をしている場所などに遺灰をまくことはできないため、注意が必要です。それに、遺灰ではなく遺骨を撒いてしまうと死体遺棄に問われる可能性があります。

一方、樹木葬は墓地や霊園の敷地内に生えている樹木の下に遺骨を埋めるという埋葬法です。

自然に還るイメージへの憧れと散骨に比べると抵抗感が少ないため、人気が高まりつつある選択肢だと言えます。

いずれにしても、お墓の承継者不在というのは大きな決断を強いられる問題です。元気なうちからよく検討し、悔いのない答えを出すようにしましょう。


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