日本人であれば、一度は「お彼岸」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。
しかし、お墓参りのイメージがあるだけで、具体的には何を指すのか知らないというケースも多いのではないでしょうか。これまでお彼岸の習慣がなかった人でも、新しい親戚づきあいのなかで必要になることもあります。
また、参加する側から主催する側に変わるかもしれません。
そのような場合にも困らないように、今回はお彼岸の基本的な情報やマナーを紹介します。
そもそもお彼岸って何?
仏教では、先祖がいる世界を彼岸(ひがん)と呼んでいます。それに対して、此岸(しがん)は生きている人間がいる世界の呼び名です。
つまり、現世を指しているのですが、そこは煩悩に満ちており、人々は迷いながら生きていると解釈されています。仏教の修行を積み重ねることによって悟りを開き、その結果として到達できるのが彼岸であると考えられているのです。
場所的には、彼岸は西方にあり此岸は東方にあるといわれています。
そのため、真東から昇った太陽が真西に沈んでいく日が、仏教ではとても重要な意味を持っているのです。彼岸と此岸のつながりが強くなると考えられており、そのタイミングで先祖を供養するようになりました。
そうすることで、先祖が極楽浄土に到達できるとされています。
このような供養の儀式が「お彼岸」であり、仏教を信仰している場合は毎年の習慣になっていることが多い傾向です。
お彼岸の時期や期間は?
太陽が真東から昇って真西に沈む日は年に2度あります。3月にある「春分の日」と9月にある「秋分の日」です。昼と夜の長さが同じになるという特徴があり、両日とも日本では祝日になっています。
ただし、お彼岸はこの両日だけではありません。それぞれの日の前後3日間を含めて、合計7日間がお彼岸の期間です。
「彼岸入り」は初日を指す用語で、「彼岸明け」は終日を指す用語です。
春分の日と秋分の日は、初日と終日の中間にあたるため、「中日」と呼ばれています。
注意が必要なのは、春分の日と秋分の日は毎年変わる可能性があることです。地球の公転の関係により、年によってずれが生じるのです。
そのため、お彼岸の予定を考えるときは、最初に日を確認しなければなりません。
ちなみに、2018年の春分の日は3月21日で、3月18日~3月24日がお彼岸、同年の秋分の日は9月23日で、お彼岸は9月20日~9月26日です。
何日も大きくずれることはありませんが、毎年必ずチェックするようにしましょう。
お彼岸は何をするものなのか
お彼岸とお盆を同じように考えている人が見受けられます。たしかに、両方とも先祖に関するものですが、お彼岸はお盆のように決まった行事があるわけではありません。
中日に近い日にお墓参りにいくのが一般的です。家族や親族で集まり、お墓の前に行って先祖を供養します。7日間もお彼岸の期間がるのは、お墓参りをしやすくするためではありません。それぞれの日に意味があることを知っておきましょう。
中日は先祖に対して感謝の気持ちを伝える日です。そのため、できるだけ中日に行くのが望ましいといえます。中日の前後の6日間は、善悪の判断を適切にし、正しく生きていけるようにするための期間です。「規律を守る」「努力する」など6つの取り組みを、1日に1つずつ行うことになっています。
そのような正しい行動を心がけることにより、先祖に敬意を払うことが大切です。
お彼岸を迎えるのに必要なマナー
自分の家にお仏壇がある場合や自分がお墓の承継者である場合は、お彼岸を迎えるにあたり、事前にしっかり準備しなければなりません。
手近なところから始めたいなら、お仏壇を掃除から取りかかると良いでしょう。
位牌や仏具を移動させながら慎重に拭いてください。日常的に掃除をするのが望ましいですが、手が回っていないなら、この機会にきれいにしておきましょう。
お仏壇以上に、普段の手入れがおろそかになりがちなのがお墓です。特に、自宅から離れた場所にある場合は、お彼岸とお盆にしか行かないというケースも珍しくありません。その場合は、時間をかけて掃除をすることになります。
墓石をきれいに磨くのはもちろんですが、周辺のゴミ集めや雑草抜きをぬかりなく行うことも欠かせません。墓石の汚れは水拭きだけでは落ちないことがあるので、専用の洗剤や掃除道具も用意しておいたほうが良いでしょう。
お墓の掃除が完了したら、供花やお供えをします。供花は季節の花を選ぶのが一般的ですが、特に決まりがあるわけではないので、故人が好きだった花でも構いません。
お供え物の基本は?
春と秋のどちらのお彼岸も、あんこのお餅を供えるのが一般的です。見た目はほぼ同じですが、春と秋で呼び名が異なるので注意しましょう。
春の呼び名は「ぼたもち」で、秋の呼び名は「おはぎ」です。両方とも花の名前が由来になっています。
前者は春に咲く牡丹の花で、後者は秋に咲く萩の花です。そのため、それぞれ漢字では「牡丹餅」「御萩」と書きます。
また、あんこが供養に使われることには、色が関係しています。
材料の小豆の色は赤ですが、昔からおめでたい色だと考えられていました。魔よけの効果があるとも伝えられています。
両者のあんこには違いがありますが、それは収穫時期の影響によるものです。収穫時期である秋の小豆は柔らかいため、おはぎを作るときは粒あんが使われます。
一方、春まで保存した小豆は硬くなっているため、ぼたもちの材料になるのはこしあんです。
お供えして供養が終わったら、どちらも食べて問題ありません。
神聖な力を体に取り入れるという意味があるからです。
基本を押さえてお彼岸に備えよう
普段、先祖のことをあまり考えない人も多いのではないでしょうか。お彼岸は、先祖を身近に感じて感謝する貴重な機会です。自分が生まれてきたのは先祖のおかげであることを自覚して、しっかり供養してください。お墓の管理がおろそかになっている人にとっては、今後のことを考える良い機会でもあります。
お墓の承継や墓じまいなども視野に入れて、どうしていくのか考えましょう。
また、初めてお彼岸に参加するときは難しそうだと感じるかもしれません。しかし、基本的な知識やマナーをしっかり抑えておけば大丈夫です。
春と秋という穏やかな季節にあるので、暑さや寒さの対策をせずに済みます。
誘いを受けた場合は、リラックスして参加してみてはいかがでしょうか。