BLOGお墓についての知恵袋

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墓じまいをした場合、墓地は「売却」できるのか

公開日:2023/2/15

「東京に出てきた。もう地元には帰らないつもりだけど、先祖代々のお墓をどうしよう……」

「自分は独身で子どももいない。墓を受け継ぐ人もいないが、どうすればいいのか」

このように悩む人は、決して少なくはありません。そしてこのように悩む人に対する解決策として、「墓じまい」があります。

今回はこの「墓じまい」をテーマに、「墓じまいをした後の墓地は、売却することができるのか」について考えていきましょう。

墓じまいとは、今ある墓石を取り壊し、更地にすることをいう

「墓地の売却」について解説する前に、まずは「墓じまいとは何か」について解説していきます。

墓じまいとは、墓地にある墓石を取り壊し、更地にして墓地運営者に返すことをいいます。

「地元から離れて長く、地元のお墓を世話する人がいない」「自分は独身で、後を継ぐ人がいない」「親が樹木葬を希望していて、先祖代々のお墓に入る予定がない」などという場合に、この選択肢が候補に入ってきます。

墓じまいをした後は当然その墓地にご遺骨を納め続けることはできませんから、ご遺骨は、

・合葬墓に入れる

・納骨堂に入れる

・樹木葬や海洋葬といった自然葬を選択する

・暫定的ではあるが、手元供養をする

などの方法で弔っていくことになります。

墓じまいをした後の墓地は、売却することはできるのか

墓石・墓地について少し見聞きしたことのある人ならば、墓石・墓地は安くないことを知っていると思います。

データによって違いはありますが、新しくお墓を建てようとする場合、およそ150~160万円がかかるとされています。また、墓地を永年にわたって使い続けるためにかかる永代使用料も大きく、30万円~100万円程度の費用がかかります。一般的に公営墓地は民間墓地に比べると費用が安く設定されていますが、都立青山霊園などは最低でも460万円かかるなど、場所によっては非常に多額のお金がかかります。なお墓地も「土地」であるため、地価が高い都心部は高く、地価が低い地方は安くなる傾向にあります。

このように多額のお金を払って手に入れた墓地だからこそ、更地にした後には売却をしていくらかを取り戻したいと思うことはごく自然なことです。

しかし実は墓地はその特性上、墓じまいをした後も「売却」することはできません。

平成19年には墓地の使用料金を巡って、京都で裁判も起こっています。これは、「父親が生前に墓地を契約した(墓石はまだ建っていない)土地がある。未使用で返すので、支払ったお金を返してほしい」と相続人が訴えたものです。

一度はこの訴えが認められ、「墓地の運営団体は、相続人に対して40パーセント程度を返すように」という判決が出ました。

しかし運営団体が不服として控訴、第2審では相続人の訴えは退けられ、運営団体が勝訴しています。

その理由として、裁判所は

1.契約の時に払ったお金は、墓地を使用する権限の設定のための対価であるし、返還についての規定もない

2.たとえ相続人が契約後にその場所を使わなかったとしても、それは「使う権限」を放棄しただけのことであって、運営団体が不当に利益を得ていたとはいえない

3.運営団体は、14年間ほかの人に使用させることができなかった

を挙げています。

出典;H19.6.29京都地方裁判所平成19年・第36号墓所使用料前納金返還請求控訴事件

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/968/034968_hanrei.pdf

「墓地」という場所が持つ特異性について

このように上記のケースでは運営団体が勝訴しています。

また、墓地は一般的な「土地」とは少し異なる性質を持ちます。

墓地に設定されているのは、あくまで「永久的にその土地を使うことのできる権利」であって、「その土地を購入者のものにする権利」ではないのです。このようなことから、年間の管理料が発生する墓地において何年も(かつ墓地運営団体からの度重なる警告を無視して)年間管理料を支払わなかった場合は、この永代使用の権利も失うことになってしまいます。

墓地はあくまで運営団体のものであるため、買ってから一度も使っていなくても、買ってから1年程度で墓じまいをしても、原則として永代使用料が返ってくることはありませんし、土地を売却することもできないわけです(※運営団体との話し合いで、運営団体と合意に至ればいくらかのお金が返ってくる可能性はゼロではありません)。

なお、墓地において「所有権」ではなく「永代に渡って使用する権利」だけが存在するのは、墓地そのものを運営するためだといわれています。もし個別に多くの人が土地を「購入」して、それぞれが勝手に売り買いした場合、墓地が墓地としてのかたちを保つことができなくなることが想定されます。そのため、墓地は土地を「買う」のではなく、「借りる」形式になったとされています。

墓じまいは、一度してしまうともう戻せません。

もう一度新しくお墓を建てようとすると、当然その費用がかかってくることになります。

「墓じまいをして墓地を返しても、お金は返ってこないこと」を念頭において、本当に墓じまいをするかを今一度考えることをおすすめします。

墓じまいをした後の土地は、返還金なく運営団体に返される

地元から離れたり、後継者がいなくなったりした家のお墓は、「墓じまい」というかたちで手放すことで心配がなくなります。

ただ、墓じまいをしてもその土地が自分たちのイキわけではありません。また、墓じまいにかかる費用も、自分たちで負担する必要があります。

このことをよく理解したうえで、「それでも墓じまいをするか、それともしないでおくべきか」を考えていくとよいでしょう。

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